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おすすめの暗黒小説『殺戮にいたる病』レビュー+6冊

      2016/05/01

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殺戮にいたる病

もうおぞましいとしか言えない。今まで読んだ小説の中で一番暗い物語だったと思います。
推理小説なのに謎解きとかどうでもいい、早く読み終わりたいと思うほどでした。
殺人者の思いが読者に乗り移ってくるようなそんな描写、グロい部分も多くあり、今でもちょくちょく思い出して嫌な気分になります。
ただ殺戮が行われる物語。もちろん読み終えた後はきちんと推理小説だったと感じるのが不思議です。
怖くてグロいのに人に勧めてしまうのは、やはりそれだけのエネルギーを持った小説であることも事実。推理小説としてとても有名な小説ですのでグロいものが苦手でない方なら挑戦してみてもいいと思います。
殺戮にいたる病 (講談社文庫)

地下室の手記

悩み続ける男が手記を連ねるだけの小説です。ちょっと暗いものでも読もうかとこの本を手に取ったら、必ず後悔します。
暗さに暗さを重ね、どろどろした感情をさらにかき混ぜて、掻きむしってもそれは全部男の頭のなかの出来事。外には気持ちを一切出さず、出すことができず自身を地下室に、気持ちを頭に閉じ込めます。
ページ毎に暗さは一層増し、不快感も増え続けます。
何もしない男の、あの時きちんとしていたら、また自分は間違えた。もう地下室から出られない。出たくない。ずっとひとりで考えていよう。
最後のページまで、愉快さは欠片もなく、本を閉じた瞬間にはやるせなさだけがあります。とんでもない本を、とんでもない男を見た。最悪の読後感を求めている方に、おすすめします。
地下室の手記 (新潮文庫)

悪童日記

とある双子が主人公の物語小説です。
三部作になっており、この『悪童日記』は1作目、以降『ふたりの証拠』『第三の嘘』と続きます。
もちろん、続編の方も強くオススメしたい作品です。

双子の主観的な文体で語られ、読感としては日記を読んでいるような感覚に近いと思われます。
双子の名前や、双子がどこに住んでいるのか、その住まいはどんな環境なのか、
など具体的な名前を指し示す言葉が少なくまるでフィクションを読んでいるような不思議な感じを受けます。
ですが、実際舞台の背景は第2次世界大戦の状況下のさなかのブタペストを舞台にしているものだと言われており、
そのことからもバックグラウンドが決して明るいものではないことが挙げられます。

そして、その仄暗い背景と共に、あっさりと人の死が描写され、それを双子がなんの感情も持たずに受けいれ、
さらにはそれを利用して自分たちは得をしようとするずる賢さが、なんともブラックすぎる感じを覚えます。

基本的に『悪童日記』1作品で完結はしておりますが、ぜひ三部作全てを読んでいただきたいです。
というのも、最後のオチがそれまでなぞってきた物語以上にブラックな展開が待っています。
衝撃を通り越してゾッとすらする展開が散りばめられており、刺激的な物語を読んでみたいという方には
ぜひおすすめしたい作品です。
悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

聖家族のランチ

暗黒という点で選びました。
林真理子さんの小説「聖家族のランチ」です。華やかな生活を送っていた家族に事件があり、家族で死者の肉を食べ尽くそうとするストーリーです。料理研究家の奥様が、死者の部位を使ってお料理をして家族で食べるのですが、死者の解体の描写や食事風景が生々しく書かれていてぞっとする内容になっています。
林真理子さんの小説らしく綺麗な装丁のハードカバーだったので購入しましたが、読んでみてびっくり、ストーリーは展開とともに気持ち悪くなりました。
恐ろしい話に衝撃を受ける1冊です。興味のある方はどうぞ。
聖家族のランチ (角川文庫)

黒い家

1997年の作品で、その2年後には映画化されました。当時は作品の中の事件と似たような事件があり、かなり話題になっていたので情報としては知っていましたが読んだのは最近です。
保険金目的で傷害事件や殺人事件が起こるという内容で、実際にあれば相当怖い話ではありますが題材としては正直そんなにパンチがあるとは思っていませんでした。
しかし読み進めると、一般人の知らない保険業界の常識や都市伝説的な逸話が出てきて冒頭から陰鬱な雰囲気も相まって引き込まれます。
私は映画版は観ていないのですが、大竹しのぶさんを頭でイメージしながら読むとかなり怖さが増してオススメです。
今まで読んだ小説の中でも、ずば抜けて情景が思い描かれる作品でしたのでクライマックスは怖すぎて震えました。お化けや超常現象ではないリアルな暗黒の世界にどっぷりと浸ることができる良作です。
黒い家

不夜城

ノワール作家、馳星周の原点がここにあります。
アジア屈指の歓楽街、新宿歌舞伎町を舞台に、様々な民族のマフィアが群雄割拠するなか、一人だけその間をすり抜けるように生きる男:劉健一
中国と日本とのハーフ:半々として生まれた彼は、この歌舞伎町で故買屋を生業として生きていました。裏切りと欲望が渦巻く場所で生きる彼の姿に共感は出来ませんでした、
しかしあまりに自分の世界とかけ離れたことを描くこの小説にのめり込んでしまいました。
全てはここから始まりました、
狂気の世界への入り口はまずこの作品から読んでみてはいかがでしょうか。
不夜城 (角川文庫)

屋根裏の散歩者

凶悪犯罪が発生するとマスコミは「心の闇に迫る」という薄べっらな言葉をよく騒ぎ立てるがこの作品は犯罪者の心を描き切っている。
人生に光というものを感じられない主人公が初めて味わった「恍惚の時間」それが、下宿先の屋根裏巡り。
他人の私生活を覗き見る事だけで満足できなくなった主人公は殺人を思いつき、実行する。
親からの仕送りで怠惰に生きている主人公の堕落した生活と犯罪によって、生を実感するという他人から見たら不条理、本人から見れば必然を江戸川乱歩は見事に描き切ってる。
日本代表する名探偵「明智小五郎」も登場する作品ですが闇世界を味わいたいのならば読んでおくべき一冊です。
屋根裏の散歩者 (江戸川乱歩文庫)

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