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おすすめの掌編小説を紹介。名作・傑作ラインナップ

      2016/05/01

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すきま時間でもサラッと読める短い、短い掌編小説。
名作を中心に順次アップしています。

遊戯の終わり

アルゼンチンの短編の名手、フリオ=コルタサル。
コルタサルの短編を一冊にまとめた掌編小説集が『遊戯の終わり』です。
全ての短編のテーマが、崩壊する日常世界、狂気と正気の葛藤、幻想と現実の危うさというテーマで一貫されています。
読んでいく内に、自分が今存在する世界が現実なのか虚構なのか分からなくなり、足下が崩れていくような恐怖と、ハッとさせられる驚きがあります。
この一冊を読まずして、掌編小説を語ることはできないと言っても過言ではありません。
外国人作家ながら、岩波文庫で手軽に入手できるのも嬉しい一冊となっています。
遊戯の終わり (岩波文庫)

宝くじ

宝くじが当たったら何を買おうかと考えたことがある人は多いと思います。しかし実際に当たると、どうしたら良いのか分からずに混乱する人のほうが多いのではないでしょうか。
夢を追っている時が一番幸せなのです。この小説は、宝くじが当たり、変わっていく人間が描かれています。大金が盗まれたらどうしようと不安になり、犬の散歩にも行けなくなってしまいます。
最後には、精神科を受診するまでになりますが、先生にも本当のことを言えない有様です。お金とは一体何なのでしょうか。短い文章でありながら、考えさせられる小説です。是非、次回は長編で読んでみたい作品です。

瓶詰の地獄

夢野久作を読むなら、ドグラ・マグラをいきなり読むより、このような掌編を読むことをおすすめします。短いながらも狂気が凝縮されています。
構成は、無人島に到着した兄妹が瓶に詰めて海に流した入った三つの手紙です。面白いのは、ただ読むだけなら三つの手紙が並んでいるだけなのですが、それが書かれた順番が実は逆で(第一の手紙、第二の手紙、第三の手紙とありますが書かれた順番は、第三の手紙、第二の手紙、第一の手紙)その事に気が付くと、無人島で彼らがどんな風に精神的に追い詰められて最後の選択に至ったのかが分かるという、ちょっとした推理もできます。
また、手紙に書かれた事柄から推測すると、この兄妹のおかれた状況にゾクッとします。
瓶詰の地獄 (角川文庫)

おーいでてこーい

星新一のショートショートですが、「世にも奇妙な物語」では「穴」というタイトルで映像化され読者層以外にも知名度があります。
とある町にぽっかりと空いた深い穴、おーいでてこーいと、呼び掛けどのくらい深いのかと試しにものを投げ入れてみるものの深さは分かりません。これ幸いとゴミ捨て場に重宝されますがやがて、死体や原発から出た捨てるにも憚られるものが人知れず投げ込まれます。
面白いのは、その町の空にある日ぽっかりと穴が開き、おーいでてこーいと声響き、一緒に投げ入れたものが落ちてきます。物語自体はここで終わりですが、やがて、この町にはゴミが降り注ぎ、核のゴミも降り注ぐのだと予測できます。因果応報とはまさにこのこと。
原発問題、廃炉作業に伴う汚染物質の処理についての問題が持ち上がる今だからこそ、読んでほしい作品です。
おーいでてこーい ショートショート傑作選 (講談社青い鳥文庫)

鳥寄せ

大学受験の問題集に掲載されていた三浦哲郎の「鳥寄せ」。問題として読んでいたのですが、あまりにも悲しい内容に引き込まれ授業中にもかかわらず泣いてしまいました。
話は、貧しく暮らす一家のお話です。父も母も生きていくために、子供のために年老いた親の為に働きますが、うまくいきません。結果として父が死に、母が気狂い、子供を間引きしてという
哀しい結末でした。深々とつづられている情景がとても物悲しくいたたまれませんでした。短いながらも、これまでの世界観が作られて、物語の中に酔心できる小説はなかなかありませんでした。

滅びの笛

話しは百年に一度咲くと言われているクマザサの開花の年の事から始まります。
花が咲くと実がなります。山に数え切れないほどのクマザサの実があふれその豊富な食料により野ネズミが大量発生し、都会を覆い尽くし首都圏をマヒさせますが、自然界の掟で異常発生した物は自然界の掟で自然消滅する運命にある。
と言う事で人間の力の及ばない自然界の掟の大きさを表した物語です。
首都圏の高速道路の路面が見えないほどに覆い尽くした道路を主人公がネズミをひき殺しながらジープで疾走しているとつぶれたネズミの油でスリップして身動きが取れなくなる場面は、身の毛がよだつ思いがするほどです。
滅びの笛 (角川文庫 緑 407-23)

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